火曜 サスペンス 名作の内海の輪は、1968年に週刊朝日で掲載された松本清張の小説が原作の作品です。1971年に松竹で映画化、その後1975年と1982年、2001年にもテレビドラマ化されたほどの人気作です。2001年版は松本清張スペシャル・内海の輪として、日本テレビの火曜 サスペンス劇場で放送されました。
中村雅俊、十朱幸代主演でエンディングを担当する工藤静香も話題を集めました。内海の輪は、愛媛県松山の洋品店店主の妻西田美奈子と不倫関係を結んでいる、東京の大学に勤務する考古学者の江村宗三が主人公です。14年前に美奈子は宗三の兄嫁でしたが、美奈子の夫慶太郎はいわゆる不能になって久しく、それが原因で不倫関係を持つようになります。宗三と美奈子は広島県の尾道で宿泊、そこで心に火がついた美奈子は松山の家を出ることを決めます。
考古学者の宗三は、スキャンダルが発覚して考古学会から追放されることを恐れます。有馬温泉に移ったところで美奈子から身籠っていることを告げられ、子供を産むといわれた宗三は、絶望からある考えに至ります。このように火曜 サスペンス 名作内海の輪は東京を始め、愛媛県松山や広島県の尾道、有馬温泉を舞台に物語が進行するドラマです。小説の舞台でロケ地としても有名なのは、仙酔島と蓬莱峡、そして兵庫県の岩倉山です。
仙酔島は広島県福山市の鞆の浦にある浮島で、鞆の浦を象徴するシンボルとしても知られます。古くから潮待ちの港として栄えてきた鞆の浦のシンボルで、隣にある弁天島と共に特別な存在の島とされてきました。外周5kmと小さな島で無人島ですが、島内には宿泊施設やアウトドア施設が存在します。国民宿舎だけでなくホテルやキャンプ場もあるので、ロケ地としても活用されますが観光スポットとしても人気です。市営の渡船が運航しているので、無人島とはいえ仙酔島に渡ることができます。
9000万年前の火山で形成されたといわれる地質は珍しく、景色はまた美しいもので時間を忘れさせるほどです。火曜 サスペンス劇場の舞台としては申し分ありませんし、景色の美しさと物語の悲しさのギャップが胸を打ちます。福禅寺対潮楼から見える仙酔島もまた格別ですし、島内を歩いて回ることで見られる様々な表情も見逃せないです。蓬莱峡は兵庫県西宮市の六甲山地に位置する峡谷で、瀬戸内海国立公園の指定区域にあたります。
風化した花崗岩が形成する蓬莱峡は高さが約100m、更にその上に堆積した礫層は約50mの厚さがあります。地質学的には断層破砕帯にあたり、いわゆる悪地のバッドランドと呼ばれますが、実は世界的に見ても一二を争うほど険しいといわれます。ちなみに花崗岩は少し触れるだけで簡単に崩れてしまうほど、かなり風化が進んでいます。一見して美しいという感想をいだきにくい風景ですが、殺伐としているところは実に火曜 サスペンス劇場向きです。
岩倉山は兵庫県宝塚市にある六甲山地の一部で、瀬戸内海国立公園に属しています。神が座すいわくらに由来する岩倉山は、標高488.4mと小ぶりで周囲に植生が見られる山です。内海の輪の目玉ともいえる有馬温泉は説明が不要なほど有名で、日本三古湯に数えられる由緒正しき温泉です。枕草子の三名泉にも名前が出てくるほどですから、本当に歴史が古く、時代を超えて愛されているといえます。
江戸時代には温泉番付で最高位の西大関を獲得していますから、温泉としての魅力に疑う余地はないです。ではロケ地としてはどうかというと、こちらも緑が豊富な自然の環境と、人々の活気が溢れる温泉街の魅力を併せ持つ、まさにドラマ向きのスポットです。湯槽谷山や灰形山、落葉山といった山々が並ぶ場所でもありますから、遠景も申し分なく絵になります。